小さな部屋で重ねる、新しい日々
ー 変わらず体に染み付いた時間に目覚める朝。
変わったのは、
誰のことも考えず、自分の好きなようにしていいということ。
あとひとつは、
ホテルのような、美術館のようなこの「ワンルーム」。
寂しいよりも、胸の奥が小さく弾む。
この先、この家でどんな時間を過ごそうか。
彼女は、ゆっくりと立ち上がり、
数歩先にある洗面カウンターで顔を洗う。
今日は土曜日、友人が昼飲みに来るらしい。
ふぅっと ひと呼吸して腕をストレッチ。
コーヒーを淹れると、豆の香りがふわりと空間を満たす。
朝の光が柔らかく射し込むキッチンは、
自分仕様になってきた。
とっておきのグラスを冷やして、ささっとおつまみをつくる。
お気に入りのお皿をテーブルに並べると思わず鼻歌が漏れる。
一人暮らし用にと買い換えたテーブルは、
掘り出し物の民藝家具。
やっと日の目を見せられる嫁入り道具達と相性がいい。
自分にとって心地よい場所を、
少しずつつくっていくのが 彼女の今の楽しみだ。
草花が増えてきた庭に面したそのテーブルで、
トーストを齧りながら、次はどこへ どこの山へと行こうか。
冒険に心躍らせるのが最近の日課となっているのだが、
今日はお預け。
庭から外した目線の その先にはオブジェのような階段。
階段を上がった奥は、彼女の秘密基地だ。
、、、ただの収納なんだけどね。
今日はお泊まり仕様にしておこう。
友人が来るまであと1時間。
白くなった髪に映える真っ赤なセーターと、
ゆるシルエットのジーンズに着替える。
顔も整えて、玄関先を掃きに出た。
「おはようございます!」
隣のドアから出てきたのは、
数日前に引っ越してきた“店子”さん。
「いってらっしゃい」
「行ってきます」
たまのこんな会話に顔が綻ぶ。
久しぶりの一人暮らしは
やることも、楽しみも、意外と多い。
やりたいこと、まだまだあるな。次は何をしてみよう。
<あとがき>
これは、棲み家展で展示&提案している模型について、空間のイメージをしてもらうためにはどうしたらいいかな?
と思い考えた物語です。
ちなみに、この模型、住宅名は「ミマモリハウス」
高齢になっての引っ越しはいいけれど、
慣れ親しんだ土地を離れるのはちょっと不安。
孤独死はとっても不安。
ーーというのが現実ではないでしょうか。
まぁ、慣れ親しんだ土地を離れることに関しては、
自由と希望を求めて えいやっと やってみれば、
なんとでもなりそうな気がします。
(そうしてこの地へやってきた移住組の考え。笑)
けれど、「何日も発見されなかった」というのは、
できる限り避けたい。
ルームシェアは なかなかハードルが高そう。
ここはいっそ、賃貸にしては。
お隣に誰かがいて、ついでに家賃収入も得られる...
敷地の場所的にも需要はあるはず。と考えました。
次に考えたのは誰に貸すか。
別棟を間借りしていた経験と、
賃貸アパート付きの実家に住んでいた友人の話から、
長く住まわれると、距離感や退去に関する問題がちょっと大変そう。
松本という土地柄、学生や単身赴任も多い。
そこで、ある程度居住期限が決まっている人を想定した、
一人暮らし向けのアパートで、コスト的にも一室だけという形にしました。
アパート部分の計画は、なんでこういう間取り無いんだろう。
という私の希望を詰めまくりました。
もちろん住居部分も、私が自宅で(この)仕事をしていなければ、
「ここに住みたい!」と思えるような計画になっています!
興味を持っていただけたら、、、ぜひ棲み家展へ♪
クライアントプロフィールも追って更新予定です💦
※棲み家については、過去のブログをお読みください。
